「多部さんが、先ほどおっしゃったように
"脳波ってなんでもわかりそう" なイメージがありますよね」
「そうそう、こんな制約がある世界とは思ってなかったです」
「はい、わたくしも申し訳なく思うところなんですが・・・
でも脳波って、信号として繊細なだけでなく、その "期待" に対しても繊細だと思うんです」
「”期待" に対して繊細?」
なんのこと?という多部さんの顔。ですよねぇ。
「多部さん、弊社の他にも脳波計のメーカーさんをご存知ですか?」
「えーーっと、XYZ計測機さんとか?」
「有名な医療計測機器メーカーさんですね。
でも、残念。 XYZ計測機さんは脳波計は作ってらっしゃらないですね」
「そうなんですか? えー、そうなると、、、他には思いつかないなぁ」
「ええ。実際、脳波計を作ってるメーカーって、本当に少ないんです。
それは、脳波の計測自体が技術的に難しい、ということもありますが、
おそらく、"脳波をどう解析・解釈したらいいか分かってない" のがハードルなんだと思います」
そうなのです。
脳波は、脳そのものと同じく「なにがどうなったらなにが言えるか」ほとんど分かっていない。
だから、もし計測はできたとしても、おいそれとそこからなにかの結論を言い切れないのが実情なのです。
にもかかわらず、多部さんみたいに「脳波ってすごいんでしょ?」と思ってる人はいっぱいいるのも確か。
わたしだって、ちょっとはそんなワクワクしたい・期待したい気持ちもあるのです。だから、今の仕事をしているのかも。
例えば「脳波を測ると、そのとき見てる夢がわかるらしいよ」なんて。確かに世の中にはそういう研究もあるみたいですね。
そういう噂をききかじってから「脳波を調べたらこうなんですよ〜!」と言われると、ついつい信じてしまいそうになっちゃいませんか?
それって「悪用しやすい危険な道具」でもあるんじゃないか、と感じてしまいます。
「そういうわけで、PGVはとても慎重に、ある意味愚直に、調査や解析を行っています。
ちゃんと ”科学的にエビデンスとして示せる” ステップを経て、論理を飛躍させず、
きちんと今後 "脳波の世界を育てていく" ために、大切に大切にしてるんです。
もしかしたら、こういう地道なトライ (そこにはエラーもあるだろうけど) の先に、
もっと確実に脳波を使いこなせる未来が来るかもしれない、来たらいいな。
そういう未来を作りたい、それがPGVの目指していることなんです」
「なるほど・・・」
多部さんもうなずいてくださってる。だけど。
「うーん、それはとっても素敵なことですね。素敵なこと、なんですが・・・
結果として仕事でアピールできないんだと、私は脳波は使わない、ってなっちゃうかなぁ」
「はい! もちろんそれは理解しています。
なので、脳波をどんなふうに使って、なにをどこまで言えるか。
そして、多部さんのお仕事のお手伝いができるかどうか。
いっしょに、具体的に考えてみませんか?」
「・・・もうちょっとはいい感じのお話になりそうですか?」
「はい、きっと! で、次回は直接お会いできませんか?」
ちょっと腰が引けてきた多部さんを促し、次回はPGV社内でお会いすることに決まりました。
次の打ち合わせ時間を調整して、ちょっと一息。
さぁて、頑張って資料まとめていくぞ〜。
2024.01.09
(つづく)
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