脳波でなにができるんですか?という多部さんの質問に、丁寧に答えていきましょう。
「えーっと、多部さん。
たとえば、サンプル飲料を飲んだ人には、なにが起きるんでしょうか?」
「うーん、喉が渇いてたのが潤った・・・かな?」
「じゃあ、もうちょっと詳しく。
"その飲料でなければならない"ポイントって、どこなんでしょうか?
喉を潤すだけなら水道水でもいい、って言えませんか?」
「あぁ、そういうことで言えば、今考えている商品は"やる気が出る!" がポイントなんですよね〜」
「なるほど。じゃあ、飲料を飲むと、その人は飲む前より"やる気が出てる"という感じですね」
「そうなるといいなぁ〜、という商品ですね。でも、それってアンケートだとイマイチ曖昧で」
「そうかも知れませんね。でしたら、より客観的に飲んだ人の状態を表現する手段として、
脳波を使う、というのはアリだと思いますよ」
「それそれ!そういう話が聞きたいんです」
わかりやすく&雰囲気を出すために、この"飲料"を"やる気ドリンク"と呼んで、このストーリーを簡単に図で表してみましょう。
調べたいことは
やる気ドリンクを飲んだ人は、飲む前より「やる気が出る」か?
という内容になります。
さて、脳波を使って、これをどう調べるのでしょう?
「え〜、そんなの、ドリンクを飲んでる間に、
どんどん脳波がやる気モードになってくるんじゃないですか?
なんかアルファ波じゃなくって、なんとか波が出てくる、みたいな」
そういう簡単な話でもないのです。前回にも書いたように「人がこういう状態になったらアルファ波が出る」とか「アルファ波が出てるからこの人の状態はこう」とは言い切れないのが脳波。
特に厄介なのが「脳波の繊細さ」。
ドリンクをごくごく飲む、という動作だけで、喉や顔の筋肉が動きます。その筋肉の動きで一気に、繊細な脳波は乱れてしまうのです。こうなると、データとして信用できない(=使えない)ものになります。
そのため、私たちが提案するのは、こういう計測方法(プロトコル)です。
1. ドリンクを飲む前に、安静状態できれいに脳波を計測する。
2. ドリンクを飲んだ後に、安静状態できれいに脳波を計測する。
3. 1と2の脳波を比較し、変化しているかどうかを調べる。
「え、それだけなんですか? なんとな〜く、ですけど
脳波が違うかどうかって、毎回何かちょっとは変わりそうですけど?」
「そうですよね、それはすごく正しい直感です。
確かに "なにかをすると脳波は変化しちゃう" のが普通なんです。
なので、もうひとひねりして考えてみましょうか」
1. やる気ドリンクの「ストロング(A)」と「弱い(B)」バージョンを用意する
2. AとBを別々に、飲む前後の脳波を計測する
3. Aを飲む前と後、Bを飲む前と後の、前後の脳波の差を調べる
4. Aの脳波の前後差と、Bの前後差の、どっちが「より変化したか」を調べる
「こうすると、AとBで、どっちが強いかが、数値で示そうじゃないですか?」
「おぉ〜。つまり、どっちが効き目があるか分かるってことですね?」
「これだけではっきりと "効き目がある" とは言い切れないですけど。
でも少なくとも、"なにか" の ”反応の違い" を示せますね」
「・・・えらく慎重ですねぇ? なんか煮え切らない、ハルさん」
「はい、えぇ、脳波はそれだけ繊細なんですよ〜」
そうなんです。今回すごく歯切れの悪いわたし。
なぜこんな遠回りな考え方・やり方をとるのか。次回お話ししましょう。
2023.12.25
(つづく)
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