(前回からのつづき)
「この、脳波の周波数帯ごとにまとめてみることが、脳波がどんな傾向かを把握するのに役立つんです」
「やっと出たな!? アルファ波 (笑)」
「(笑) そうですね、やっとですね。
そして、ここで、特に注目したいのは、ガンマ波なんです。
たとえば、こんな研究があるんですよ」
作業療法におけるウェアラブル脳波計の有用性の検討 - Frontal midline theta rhythmの測定の試み https://mol.medicalonline.jp/newbunken?GoodsID=dm2sagyo/2021/002402/006&name=0027-0032j |
集中力の維持と長期的な学習効果につながる方法(東京大学・池谷裕二教授の見解)(朝日新聞デジタル) |
「おお、アルファ波ならぬ "ガンマ波"? ”ガンマ帯域”?」
「そうです。”ガンマ帯域”と書かれてるところは、”ガンマ波”と読み替えても大丈夫です。
後者の記事の中でも
・・・池谷教授によると「脳波は前頭葉のガンマ波が集中力に関与していると考えられます」とのことで・・・
引用: 集中力の維持と長期的な学習効果につながる方法(東京大学・池谷裕二教授の見解)(朝日新聞デジタル)
とありますね。
ガンマ波の強さ (正確には「パワー値」と呼びます) が
「集中力」に関係しているのは大体確かなようです。
だから、ガンマ波の強さを調べて、集中力を解釈することが可能だと思います」
「でもハルさん。"やる気"から始まって、そのあと"疲労"からの"集中を調べよう" って、
なんか、最初の目標の ”やる気” から離れてしまっていないですか?」
「いえ、そうでもないんですよ。そもそもですね・・・」
“やる気” そのものを調べたい。その気持ちは、わかります。
多部さんの知りたい入口は "やる気" だから、そこは外せないポイントです。
でも一方で、“やる気”って、難しい。どうやって測ればいいのかよくわからない感じがします。
そもそも”やる気”って、なんなんでしょう?
よくわからない曖昧な課題は、脳波の実力に沿って、「課題分解する」ことが大事だったのですね (Episode1)。
たとえば、「やる気」を測る方法として、こんな実験を考えてみましょうか。
新聞を1枚持ってきて、その紙面の文字を1つずつ数えていく。 |
はい、なんとなくそれっぽいですね。
でもここで、同じ作業に対して「1時間1万円払うよ」と言われたらどうなるでしょうか? もしかして、すごくやる気が高まるのでは?
でも、それは何に対するやる気、なのでしょうか?
それに、もし1万円もらえることになったら、文字数を数える作業の、速度や正確性が格段に向上するでしょうか?
こう考えてみると、"やる気" は、作業内容そのものより、それ以外の環境や条件に大きく影響を受けそうだ、という気がしてきますね。それに、何かの基準 (数えた文字数など) でやる気を数値化するのもなかなか難しそうだ、ということも見えてきます。
ではここで、"やる気" を "集中力" と書き換えて、上の文章を読みかえてみましょう。
新聞を1枚持ってきて、その紙面の文字を1つずつ数えていく。 |
こう書きかえると、「うん、これは集中力だよね」と、違和感なく感じられるのではないでしょうか?
このように、曖昧な課題を、より確からしい課題に置き換えて考え直す、ということも、とても重要な課題分解のステップなのです。
「なるほど、これはしっかりした議論ですね。こういうふうに考えたことなかったなあ」
「そうですよね。みなさん、”やる気が何か" を肌感としてはわかってる。
だから、あえて分解して考えたりすることは、日常ないんです。
でも、脳波を使うとなると、それではダメ。
というか、そんな曖昧な設定で脳波を使っても、ちゃんとした結果につながらないんです」
「ハルさん、わかりました。
じゃあ、”集中力”を使って、そろそろ実際の実験を考えてみたいです!」
2024.02.05
(つづく)
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