(前回からのつづき)
「ハルさん。集中力を調べる脳波実験って、とりあえず、どういうふうに計画するんですか?」
「調査が必要なパラメータから、考えてみましょうか。
まず、基本的な実験のパラメータとして
- 飲料
- 人
- プロトコル
があります」
「ぷ、ぷろとこる、ってなんですか?」
「プロトコル、というのは、実験の中で、
"これをやって、これをやって、このタイミングで計測して・・・"
などの手順や流れを決めたものなんです」
実験プロトコル (プロトコール、とも呼びます) は、化学実験などでよく使用される言葉ですが、PGVの脳波実験では
- 被験者(脳波を測定される人)の状態 (安静にしているかタスクをしているか)
- 目を開いているか・目を閉じているか
- タスクの種類
- それぞれの持続時間
の組み合わせで定義することが多いです。
PGVの脳波実験では、例えば
みたいな感じに1回の計測を設計することが多いです。
「今回だと、タスクのところに ”飲む” が入るんですね?」
「そうです、そうです。
また、他の基本パラメータをさらに細かく決めていく必要がありますね」
パラメータは、今回の実験では例えば
- 飲料
- 何種類を比較するか?
- どの銘柄を使うか?
- 飲むタスクの時間は?
- etc.
- 人
- 何人くらい?
- 男女比は?
- 年齢は?
- 食の好みなど?
- 生活習慣?職業? etc.
などがパッと思いつきます。
細かく見ていけば、実際にはパラメータの種類や選択肢には際限がなくなりますので、調べたい目的と予算を考慮して、適切なバランスで取捨する必要もあります。
「調べたい目的に合わせて決めるんですか? 客観的な基準とかではなく?」
「そうですね、もちろん ”客観的な調査” が目的、ということもあり得ます。
でも、今回は、多部さんの作る商品のターゲットとなるお客様に、
よりよい商品をお届けすることが目標ですよね?
だとしたら、そのターゲット以外の方をまんべんなく選んでもあまり意味はないと思います」
確かに、科学的に一般的な証拠を調べたい、例えば論文を書くための実験では、偏りなくパラメータを定義する必要がある場合もあります。
ですが、今回の多部さんのご相談のような、製品開発に関する実験では、必ずしもそのような一般的な結果を出す必要はない、と考えます。
やみくもに一般的な結論を追い求めると
- 実験の規模が大きくなる
- 解析が難しくなる
- 調べたい部分にフォーカスできなくなる
などの、実施の課題が生まれてしまうのです。
「そうか、なるほど。あくまで "商品" だから、
その商品の範囲の中で、できるだけ中立的に実験すればよい、ということですね?」
「そう私たちは考えています」
「OK! じゃあですね、まずこの飲料のターゲットは、前もお話ししたかもしれませんが
”20代のオフィスワーカー" で・・・」
多部さんの顔に熱い "やる気" が浮かんできたみたい。
今日はいっしょに残業かな。
2024.02.13
(つづく)
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