脳波計を使ってヒトの脳波を正しく計測するには脳波計の特性を把握しておくことが重要です。脳波計の原理を理解することで、脳波計のもつ特性が見えてきます。この記事では他の計測方法とも比較しながら脳波計の原理について解説していきます。
脳波計はどのような原理で脳波を計測し記録しているのでしょうか?それを理解するには、まず「脳波とは何か」を知る必要があります。
脳波(のうは、Electroencephalogram:EEG)は、脳神経細胞の活動によって生じる電気的な変化を増幅器で増幅し、オシログラフや用紙に記録したものです。
脳波の歴史は意外と新しく、1924年にドイツの精神科医ハンス・ベルガーが、ヒトの大脳皮質から活動電流の記録に成功したのが最初です。その5年後の1929年、ベルガーはこの脳の電気活動をElectroencephalogram(脳波)と名付けて発表しました。
脳波はどのように発生するのでしょうか?脳は、数多くの神経細胞で構成されていますが、細胞が情報を伝達する際に微弱な電流が発生します。1つの細胞から生じる電流は非常に弱いので、1つの細胞が活動しただけでは計測できません。脳の神経細胞は規則正しく並んでおり何万もの細胞が同時に活動することで同じ方向に多くの微弱電流が流れます。この電流の総和によって生じた電位差を計測したものが脳波です。
脳波計の原理
脳波を測定する装置が、脳波計(Electroencephalograph:EEG)です。
先ほど述べたように、脳の活動による電位差を計測したものが脳波でした。頭皮に2つの電極を配置することにより、その2点間の電位差を測ることができます。
電位というのは電気的な「高さ」のようなものです。水が高いところから低いところに流れるように、電流も電位の高いところから低いところに向けて流れます。電位差は「電圧」ともいいます。つまり脳波計は理科の実験で使った「電圧計」と同じ原理なのです。
脳波計は、電極の間の電位差を、アナログ信号として捉え、デジタル信号に変換する機能を持っています。デジタル化された脳波は、時間情報と電圧情報から構成され、周波数解析やAI解析などに用いられます。
脳を検査する方法としては、脳波計の他に次のような方法があります。
脳波計は神経活動を電気的に記録することから、他の検査手法と比べて比較的被験者への負荷が小さく低コストであり、時間的な分解能が高い、といったメリットがあります。
検査手法 |
コスト |
時間 |
身体負荷 |
EEG |
◯ |
◯(30分以下) |
◯(侵襲性無し) |
MEG |
× |
△(30分程度) |
◯(侵襲性無し) |
MRI |
× |
△(30分程度) |
△(狭く煩わしい) |
PET |
× |
×(1時間以上) |
△(放射線被爆) |
脳波以外で、ヒト・動物の電気活動を記録するものとしては、心臓を対象とした心電図や筋肉を対象とした筋電図などがあります。
これらの信号と比較すると、脳波はとても小さく、μV(マイクロボルト)単位の信号を記録する必要があるため、高いノイズ耐性や信号精度が要求されます。
パッチ式脳波計
PGVが開発した「パッチ式脳波計」は高精度に脳波計測が可能かつ、使用性を兼ね備えているウエアラブルな脳波計です。
以下で、「パッチ式脳波計」及び「パッチ式脳波計用電極」はどのような原理で脳波を記録しているか、説明します。
パッチ式脳波計用電極は、生体安全性試験をクリアした、生体に優しく、極薄で伸縮性の高いシート型の電極です。皮膚の凹凸に関わらず、ヒトの前頭部の皮膚に密着できるため、装着感を感じさせません。
従来のヘッドギアやヘッドバンドのように、体に押し付ける必要のある脳波計に比べて、被験者や実験参加者の方への身体的・心理的な負荷を大きく改善することができます。
パッチ式脳波計は、約30gと小型で軽量です。また、電極を通して得られた脳波を付属のタブレットに無線で転送するので、長いケーブルや固定具が不要です。小型・軽量・ワイヤレスのため、覚醒状態や睡眠状態など、あらゆるシチュエーションで用いることが出来ます。
ウエアラブル脳波計なので、装着したまま自由に動ける状態で、連続約12時間の脳波計データをリアルタイムで取得可能です。日常生活を送りながらの計測や、行動を制限しにくい幼児への利用など幅広い応用が可能です。
加えて、24bit(最大分解能0.022マイクロボルト)と言った非常に高い電圧分解能と、医療機器認証基準を満たした高いノイズ耐性を有しています。
PGVパッチ式脳波計は医療機器の安全性や精度を兼ね備えた、誰でも簡単に利用可能なウエアラブル脳波計です。