発表概要:
- 学会名:第24回日本感性工学会大会(一般セッション[2A-1]食)
- 発表日:2022年9月1日
- タイトル:「動物性食品に特有な満足感の計測 ―脳波を指標とした動物的・植物的風味判別モデルの作成―」
- 発表者:不二製油グループ本社株式会社/不二製油株式会社 富研一、平垣内一子、安田優太郎、佐藤亮太郎、齋藤努(敬称略)
発表内容:
ヒトはなぜ肉を食べるのでしょうか。健康面だけでなく、食の安定的供給という観点からも、昨今、植物性食品(Plant-Based Food、PBF)に大きな期待が寄せられています。PBFは美味しく、食感に大差ないと評価されるものの、その一方で、風味がちょっと違う、本物の肉と違って物足りなさを感じ十分に満足感が得られないなど、普及拡大の課題が指摘されています。
動物性食品と PBF の喫食時に発生する感覚の違いが脳の処理に起因するのであれば、それらの感覚に特徴的な脳波を捉えることで満足感を評価することにつなげられるかも知れません。そこで、研究の第一ステップとして、両者喫食時の脳波を計測し、脳波データを基に動物的あるいは植物的な食品らしい感覚を判別するAIモデルの構築を試みました。
今回は、測定サンプルとして市販の動物性スープと市販の PBF スープ(動物性スープ様)を用い、被験者12名を対象とし数回の喫食時の脳波を計測しました。
パッチ式脳波計を用いて計測された脳波データから嚥下前後の電圧データの移動平均を取り、2 値分類を行いました。その結果、嚥下後比較的短時間の中で一定の精度で判別モデルを構築することができました。また、この判別モデルを用い、不二製油様の開発品PBF スープが、市販の動物性スープと市販の PBF スープのどちらに分類されるかの評価を行いました。
結果として、以下の示唆が得られました。
- 動物性の食品らしい感覚を、ヒトは嚥下後比較的短期間で特徴的に捉えている可能性がある。
- 開発品PBF スープが、動物性スープと同様の風味感覚、または風味感覚に伴って動物性スープ喫食時と同様の満足感を与えた可能性がある。
まとめますと、今回の研究は、嚥下前後の脳波において動物性食品らしい風味や満足感に類する感覚の可視化の可能性を期待させる結果となりました。