NAIS Entry活用事例

NAIS Entryを使ってみよう④NAIS Entryのデータセットは他の機械学習ツールでも使用できる

PGVが開発した脳波AI解析クラウドNAIS Entryは、脳波計測から脳波AI解析までワンストップで行える機械学習ツールです。今回はNAIS Entryで自動生成されたデータセットが、他社の機械学習ツールにも簡単に適用可能であることを実証しました。


NAIS Entryで自動生成したデータセット

NAIS Entryは、計測した脳波からデータセットを自動的に取得し、機械学習を活用することで脳波を解析できます。例えば、怖い音楽や楽しい音楽など異なる刺激を脳に与えると、α波やβ波など各周波数成分で強弱の違いが生じます。これらの特徴量(パワー値)によって、2つの状態を区別できるかなどの比較が可能となります。

参考記事:NAIS Entryを使ってみよう③AI解析で統計検定ができる

ただし、NAIS Entryは,、異なる刺激を与える前の脳波の比較、異なる刺激を与えた後の脳波の比較、そして刺激を与える前後での脳波の状態の比較を行えるものの、異なる刺激を与えている最中に脳波を比較できません。そこで、他社の機械学習ツールを使い異なる刺激を与えている最中の脳波の比較を行いました。

Blog_07_02図1. 実験の概要

実験の概要

機械学習ツールとしてPrediction One(ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)とAMATERAS RAY(SCSK株式会社)を利用しました。

今回も、Sammler(2007)[*1]にもとづき、実験を設計しています。

参考記事:NAIS Entryを使ってみよう①音楽刺激の違いを脳波で見分ける

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図2. 実験の設計とスケジュール

実験には3人の被験者が参加しました。パッチ式脳波計で、Fear Musicを聴いている状態(タスクA)、Happy Musicを聴いている状態(タスクB)、Relax時(タスクC)の脳波を計測した後、NAIS Entryでデータセットを自動生成しました。

データセットに含まれるデータの内訳は次のようになっています。

Blog_07_04表1. NAIS Entryが自動取得したデータセット内のデータの内訳

各データには計測した時間などを表す「時間情報」、各チャンネル(脳波計の電極)の「脳波特徴量」(周波数帯域のパワー値)、タスクを実施する前なのか後なのかなどを文字として記録する「アノテーションラベル」、ノイズデータかどうかを2値化した「ノイズ判定」、被験者を数値化したものなどの情報が含まれています。

このデータセットを2種類の自動機械学習(AutoML)ツールに学習させることで、異なる刺激を受けている状態を比較しました。

データの前処理

NAIS Entryが自動取得したデータセットを他社の機械学習ツールに入力するためには、データの「前処理」   が必要です。データセットを機械学習ツールに活用するには、以下の3つの処理を行う必要があります。

1. ノイズデータの除去
データセットには、体が動くことによって発生する「体動ノイズ」など、機械学習を行うには「質の悪い」データが含まれています。こうした質の悪いデータ、つまり「ノイズ」を識別し、   データセットからノイズと判定されたデータを除去します。

Blog_07_05表2. ノイズデータの除去処理

2. Z-score変換
Z-score変換については、以前の実験でもご紹介しました。繰り返すと、各タスクを行う前の被験者の状態が同じとは限らないため、比較できるように状態を揃える必要があります。Z-score変換は、こうしたデータを揃えるための処理です。今回複数の被験者が実験に参加したので、全被験者が受けたタスク前の状態に対して、Z-score変換を行いました。


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図3. Z-Score変換で全被験者のタスク前の状態(特徴量)を揃える

参考記事:NAIS Entryを使った脳波AI解析事例〜③AI解析で統計検定ができる

3. データ形式を整える
Z-score変換後の特徴量を羅列し、タスクAにはフラグ1、タスクBにはフラグ2のように、ラベルで振り分けます。Blog_07_07表4. 被験者がどのタスクを行ったかフラグ(Flag)でラベリングする

こうしたデータの整形によって、各機械学習ツールを使うことが可能となります。

機械学習の結果を評価する指標

機械学習によって得られた結果が満足いくものなのかを評価する為に、様々な指標が用いられます。今回の実験の様に異なる刺激を与えたときの脳波状態の比較は「分類問題」と呼ばれ、次のような評価指標が使われます。

・正解率(Accuracy)
・適合率(Precision)
・再現率(Recall)
・F値(F1-Score)
・AUC(Area Under the Curve)

これらの指標は、次のような意味を持ちます

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図3. 機械学習による結果を評価するさまざまな指標

正解率

予測したデータのうちどれだけ正解したか

適合率

ポジティブ(陽性)と予測したデータのうちどれだけ実際にポジティブだったか

再現率

実際にポジティブであるもののうち、ポジティブ(陽性)であると予測されたものの割合

混同行列

真陽性率(TP: True Positive)や偽陽性率(FP: False Positive)などをまとめた行列

F値

適合率と再現率の両方を反映させた指標

予測確率

陽性と陰性とに分類される確率。2つの確率分布が離れるほど良いデータと言える

ROC曲線

縦軸が真陽性率、横軸が偽陽性率でプロットした曲線

AUC

ROC曲線の下側の面積。ROC曲線が左上に湾曲しているかどうかを数値化した指標

評価の結果

では、NAIS Entryのデータセットを各機械学習ツールで学習してみましょう。

Precision One
Prediciton Oneの評価結果は次のようになります。Blog_07_09図4. Prediction Oneの評価結果:分類精度(AUC)が高いと評価された。

分類精度(AUC)は79.85%と高い評価が得られました。続いて、各評価値を確認しましょう。

Blog_07_10図5. Prediction Oneの評価結果:評価指標の数値は軒並み高い

いずれの指標値も高いことが確認されます。

Blog_07_11図6. Prediction Oneの評価結果:2は陰性、5は陽性を意味する。混同行列(左)と予測確率分布を確認できる。

陽性の予測確率分布(赤色)と陰性の予測確率分布(青色)とが左右に離れており、良い結果が得られました。

続いて、ROC曲線です。左上に湾曲しており良い精度であることが示されています。最初に述べた分類精度(AUC)の高さはこのことを反映しています。

Blog_07_12図7. Prediction Oneの評価結果:ROC曲線をプロットしAUCでも高い評価が得られた。

最後に各特徴量の寄与度を示します。

Blog_07_13図8. Prediction Oneの評価結果:各特徴量の寄与度も確認できる。

AMATERAS RAY
続いて、AMATERAS RAYの評価結果を確認していきましょう。やはり、分類精度(AUC)が高いという評価が得られました。

Blog_07_14図9. AMATERAS RAYの評価結果:分類精度(AUC)が高いと評価された。

Blog_07_15図10. AMATERAS RAYの評価結果:各特徴量の寄与度も確認できる。

まとめ

今回、NAIS Entryで自動生成したデータセットを他社の機械学習ツールで学習させることで、異なる脳波の状態を比較してみました。得られた結果が満足できるものなのかどうかを、さまざまな指標で測ったところ、いずれの機械学習ツールでも高い評価だったことが明らかになりました。

PGVでは、今回実験に使用したパッチ式脳波計や、脳波AI解析クラウドNAIS Entryなど、脳波の活用をお考えのお客さまのご相談を承っております。資料請求やお問い合わせはこちらよりお願いいたします。

参考文献
*1 Sammler, D., Grigutsch, M., Fritz, T. & Koelsch, S. Music and emotion: Electrophysiological correlates of the processing of pleasant and unpleasant music. Psychophysiology 44, 293–304 (2007).

 

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